ヨガレッスンの終盤に差し掛かると、穏やかな波に揺られるような曲が流れてきました。何度も聞いて気になっていたところ、Deva Premalが歌う『OM Namo Bhagavate』という曲だと知りました。
”OM Namo Bhagavate Vasudevaya”のフレーズを何度も繰り返すシンプルな曲ながら、ゆったりとした曲調の綺麗な歌声に身を委ねていると、心が穏やかに奥深くからほぐされていくのを感じます。
この言葉には、いったいどのような意味が込められているのでしょうか?
OM Namo Bhagavateの曲紹介
Deva Premalご本人のyoutubeチャンネルでこの曲がアップされています。
こちらを聞きながらご覧ください。
英語表記:OM Namo Bhagavate
日本語:オーム ナモー バガヴァーテ
歌手:Deva Premal(デヴァ・プレマール)
OM Namo Bhagavateの意味とは
OM Namo Bhagavate Vasudevaya
(オーム ナモー バガヴァーテ ヴァスディヴァーヤ)
この言葉はヒンドゥー教で人気のあるマントラのひとつです。
「主よ、私は神聖なるクリシュナ神に敬意を表します」を意味し、クリシュナ神を讃えるマントラです。サンスクリット語でそれぞれ一音ずつの意味はこちらになります。
om | 宇宙のはじまりの音、宇宙の普遍的な原理 |
namo | 礼拝、お辞儀をする、敬意を表する |
bhagavate | 神になりつつある人、神と見なされる人 |
vasudevaya | すべての存在の生きる神様(生命 / 光) その他の意味として、クリシュナはヴァスデーヴァの息子であったため、「ヴァスデーヴァ」と呼ばれていました。 |
OMやマントラの説明は、こちらの記事で説明しているのでご参照ください。
このマントラを唱えると、輪廻転生から解放され、精神的な自由を得られるモークシャ(解脱)を達成すると言われています。
クリシュナ神を讃えるマントラですが、クリシュナとは一体どんな神様なのでしょうか?
クリシュナは古代インドの神話的英雄
クリシュナはインドでは最も人気のあるヒンドゥー教の神様のひとりです。
「神聖さ」「知」「信愛」「美」を司る神様で、最高神に位置づけられるヴィシュヌ神の第8の化身とされています。
クリシュナはサンスクリット語で「黒い」「暗くなる」という意味の形容詞に由来します。絵画や彫刻では”青い肌”で表現されることが多く、金色のドウティ(腰布)をまとい、クジャクの羽の王冠を戴いた姿で描写されています。
クリシュナの逸話は、波瀾万丈な出生秘話やヤムナー川のカーリヤ蛇の退治、カンサ王の討伐などエピソードに事欠きません。詳しく知りたい方は下記サイトもお読みください。
“神の詩”として伝承されるバガヴァッド・ギーター
バガヴァッド・ギーターはサンスクリット語で「神の詩」と伝えられる聖典。
主人公アルジュナの御者として仕えるクリシュナは、親族同士の争いにためらいが生まれたアルジュナにギーター(詩)を授けます。
「ためらいを捨てクシャトリヤ戦士としての義務を遂行すること」を勧める様子が対話形式で描かれているのですが、ここではwikipediaよりバガヴァッド・ギーターの概要を引用します。
バガヴァッド・ギーターの概要
戦争直前、親族同士が殺し合い、師を殺すという罪悪感に耐えきれなくなったアルジュナは、戦を放棄しようとする。これに対し、クリシュナはアルジュナに対し、武器を手に取って戦うように説得する。
ここでクリシュナは、偉大なヴィシュヌ神の姿をアルジュナに見せたり、クルクシェートラの戦いでアルジュナに討たれた者は天界へ至ることを説いたり、あらゆる説得を行う。
アルジュナは遂に決心し、ガーンディーヴァを携えて戦に望むが、この後も何度も戦争を忌避する素振りをみせ、クリシュナを困らせる。
wikipedia『アルジュナ』
親族同士の争いに悩み苦しむアルジュナに限らず、人は誰しも地位や仕事、役割など義務を持っています。
その義務を果たすために、神に捧げる思いで行動し、どんな結果が待っていようと、それに対する執着から離れて、全てのものに敵意を感じないこと。
その思いが永遠の境地に通じるとクリシュナは述べています。
こうしたエピソードから精神的自由を得られるマントラとして、クリシュナを讃えるようになったのではないでしょうか。
まとめ
このマントラは「神聖なるクリシュナ神に敬意を表します」を意味しています。
私たちにはあまり馴染みがないクリシュナですが、神様を信じ捧げる思いで役割を果たすことにより幸福になれると伝えています。これはヨガ哲学のバクティヨガに通じるものがあります。
こうした背景を知って、『OM Namo Bhagavate』を聴くと印象も変わるのではないでしょうか。
クリシュナ神を心に思い浮かべながら聴いてみましょう。