ヨガ哲学と聞くと学問上の話しのように思えますが、日常にも活かせる教えがたくさんあります。人間関係に苦しんでいる人は少なくありませんが、それを解消する手助けもヨガ哲学から見つけ出すこともできます。
今日は「アヒムサー(非暴力)」という教えから、人にしないほうがいいことを考えてみます。
暴力とは肉体的なものだけではない
非暴力の範囲をどこまで意識するのか、ということがポイントです。
暴力と聞いてイメージするのは、殴る・蹴るなどの物理的な暴力ではないでしょうか。ですが、「あなたって最低ね!」みたいな言葉にも人を傷つける力があります。そして言葉は心に突き刺さるため、傷を認識することがより難しく根が深いものになります。
アヒムサーとは肉体的な暴力のみならず、言葉の暴力、精神的な暴力など他者を傷つける行為を行わないことだと考えています。
ではなぜ暴力がいけないのでしょうか?
これは僕の考えになりますが、苦しみの連鎖を作り出してしまうからだと思います。
暴力をふるえば他人に痛みを与えてしまいます。他人が痛みを受けると、苦しみを引き起こされ、それは憎しみや復讐などにつながります。そして復讐行為を行えば、さらに新たな苦しみを生み出すことになります。暴力とはそうした苦しみ・憎しみをどんどん生み出してしまいます。そうした負の連鎖を引き起こさないためには、そもそも負の連鎖を作らないことが大事だということです。負の連鎖を作らないためには、自分のところに暴力が来てもアヒムサーを意識し、暴力の連鎖を断ち切ることを行います。
アヒムサーとは思考に気をつけること
ではこれからアヒムサーを行うにあたって、何を心がけていくべきでしょうか。それは思考に気をつけることだと思います。自分が考えていることが言葉や行為につながりますから、自分の考えていることに気をつけないといけません。だから表面上で優しい言葉や行動を取り繕っても、心の中で人を傷つけることを考えていてはアヒムサーではないということです。例えば仕事の接客ではお客様に笑顔を浮かべていても、心の中で罵っているなんてことを聞きますが、それは暴力の種が蒔かれている状態です。
自分の考えていることとやっていることが違っているので、その歪みは自分の心を傷つけることにつながります。自分の心を傷つけるとはストレスを抱えること。
そのストレスを解消するために過食に走ったり、愚痴を言ったりすることになります。
アヒムサーとは思考に気をつけることではないかと思っています。
思考に気をつけるとは、先ほどの仕事の接客で言えば、自然とお客様に笑顔を向けられるようになることです。そうなるためには「なぜこの人はこのようなことを言っているんだろう」、「何に困っているんだろう」などの様々な想像力を働かせる必要があります。するとお客様が何を求めていて、このような行動に出ているのが理解することができますから、この人を助けたいという気持ちを持てば暖かい態度で接することができるようになります。
自らの行動がどのような感情を引き起こすのか分析する
このように思考を分析・整理していくことを「識別」と呼び、そうした識別するヨガを「ジュナーナ・ヨガ」と言います。ジュナーナ・ヨガとは思考や言葉・行為を区別し、その思考がどういった気持ちから発せられたのか、どういった結果を引き起こすのかなどを一つ一つ分析していきます。
すると自らの行動がどのような結果を引き起こすのか少しずつわかるようになりますから、自然と人を傷つける行為を取り除くようになります。それが上達してくると、誰も傷つけない状態、アヒムサーが達せられるようになります。
そして自らの行動がどのような結果を引き起こすのかがわかってくると、「人に喜んでもらえること」を意識してみましょう。すると人を傷つけることをせずに喜ばれることを積み重ねることになりますので、周りの人もあなたに喜ばれることを返してくれるようになります。
すべてはあなたの気持ちから生まれてきます。
ぜひ思考に気をつけてみてくださいね。